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発見!ご当地「油」紀行

ところ変われば、食文化も変わります。
ここでは、油を使用したご当地の特徴ある料理や、
レシピなどを紹介します。

第16回

広島県(庄原市) ワニ料理

 
海から遠く離れた山あいの地では
“ワニ”の料理がご馳走だった
広島県庄原市。広島県の北東部に位置し、標高150〜250mの台地に市域が広がっています。郊外には中国地方で唯一の国営公園“国営備北丘陵公園”があり、市民のみならず近隣から多くの人がアウトドアを満喫しに訪れます。町を離れ北西へ25kmほど進めばそこは口和町。1000m級の山懐に抱かれた緑豊かな地域です。さらに北へ進めば高野町。
広島へおよそ90km、松江まで100kmというこの山あいの地では昔から“ワニ”が食べられていました。ワニとは? また料理とは? その郷土食を探ってみました。
花の広場、みのりの里、ひばの里、オートビレッジなどをもつ国営備北丘陵公園。庄原市の中心部から近くアクセスのよさでも人気です。   
口和町竹地川沿いにあるほたる見公園。キャンプ、渓流釣りのほか、季節にはホタル観賞が楽しめます。 (写真左)
花の広場、みのりの里、ひばの里、オートビレッジなどをもつ国営備北丘陵公園。庄原市の中心部から近くアクセスのよさでも人気です。
(写真右)
口和町竹地川沿いにあるほたる見公園。キャンプ、渓流釣りのほか、季節にはホタル観賞が楽しめます。

口和町や高野町に届けられたワニ肉
そのルートは“ワニの道”と呼ばれた


ワニ肉のブロックは薄いピンク色。カジキマグロのように見えます。高たんぱく、低脂肪、低カロリーでビタミンB1などの栄養価も高いのが特徴です。
“ワニ”とは爬虫類のワニではなく、サメやフカの古語で、山陰地方から広島県北部で現在も生きた言葉として用いられているのです。

海から遠く離れた広島の山中では、魚といえば干物か塩ものが普通でした。生で食べる“無塩(ぶえん)もの”は戦前まではきわめて珍しかったのです。こうした中でワニは刺身で食べられる貴重な魚でした。しかし、ワニの体に含まれる尿素が分解されるとアンモニアを生じます。このアンモニア臭のためにワニ肉は嫌われがちなのですが、鮮魚でも腐りにくく、食中毒になりにくかったため、冷蔵技術の無かった時代に無塩ものとして山間地へ運ぶのに適した魚だったのです。

ワニの肉は島根県太田市の波根(はね)、五十猛(いそたけ)などの漁港から石見(いわみ)、頓原(とんばら)、赤名を経て三次(みよし)や庄原の高野地方へ運ばれました。このルートを“ワニの道”と呼びますが、五十武あたりの漁民が刺身で食べられる魚として備北へ販路を求めた結果、ワニ料理はこの地方に普及していったのでした。

ワニは寒中に味がよくなるため、秋祭りや正月、祝言などハレの日にご馳走として食べられました。祭りの時にワニの刺身を大皿に盛って出し「腹が冷えるまでたくさん食べてください」といってもてなしたのです。身が柔らかくあっさりした味のワニの身は、どんなに食べてもお腹にもたれず「腹がつべとうなる(冷たくなる)までたべてもよい」と言われていることから、現在でもこう言ってすすめられます。

こうした歴史をもつワニですが、冷凍冷蔵技術の発達により、山中でも鮮魚が入手できるようになると 、自然とワニの道も閉ざされました。 しかし現在、庄原市口和町にワニ料理を出す専門店があります。郷土食を守り、また新たなワニ料理の提供もしています。


人気はワニフライと“わーにんぼ”

フライ用にワニ肉をカット。大きさはポークのヒレカツくらいです。見た目はトンカツそのもの。ぜひ揚げ立てをいただきたいものです。
現在も、庄原市口和町竹地谷に、ワニ料理の専門店があります。店は農家の主婦の起業を目的に、昭和61年に6人の主婦がオープンさせました。現在は3名の方が店の切り盛りをしています。


人気のワニフライ料理を教えていただきました。ワニのブロック肉を厚さ1cmほどにカットし、塩・コショウ。小麦粉をはたき溶き玉子にくぐらせてパン粉をつけます。中身がワニというだけで手順はトンカツとまったく同じ。そしてあとは揚げるだけ。両面がキツネ色に揚がれば完成です。


ソースはトンカツソースでもいいのですが、「今日はゴマだれにしてみました。ワサビの花もあしらいに」と代表の方。サクッとした揚げ立てをほおばれば、肉はまるでチキンのよう。



潰したご飯に高菜漬けもの・枝豆・ゴマ・人参を加えて混ぜ合わせ、ご飯とほぼ同量のワニ肉を加えます。
そしてもう一品が“わーにんぼ”。ワニ肉を使ったオリジナルのおやつです。炊いたご飯を半分ほど潰し、ご飯の粗熱が取れたら粗みじんにしたワニ肉、広島菜の漬物と枝豆、煎りごま、人参の千切りを混ぜ合わせます。さらに加えるのが魔法の粉。市販のパンケーキミックスパウダーなのです。ほのかに甘みがつき、おやつとしても楽しまれています。
五平餅のような形にします。
竹串に小判型に成型。五平餅のような形になりました。もとはきりたんぽのような棒状に作ったので、ワニの棒から“わーにんぼ”のネーミングになったといいます。あとは油で揚げて完成。冷めてもおいしくいただけます。
パンケーキミックスのほのかな甘みにゴマ・枝豆のプツプツした食感が広がるわーにんぼ。
「なかなか複雑な味でしょ(笑)」と店の方。懐かしい山里の味わいでした。
冷凍冷蔵技術がなかったころの山村のご馳走・ワニ料理。現在は新鮮なワニ肉を使った新しい郷土食が楽しめます。

(11.6.15)

●問合せは
庄原市役所商工観光課 電話 0824-73-1178
http://www.city.shobara.hiroshima.jp
●価格
ワニフライ 500円前後 / わーにんぼ 1本150円〜
●庄原市へのACCESS
電車:広島駅からJR芸備線で約2時間25分、備後庄原駅下車
車:中国自動車道庄原ICから県道231号で約1.5km
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