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発見!ご当地「油」紀行

ところ変われば、食文化も変わります。
ここでは、油を使用したご当地の特徴ある料理や、
レシピなどを紹介します。

第37回

島根県大田市 天ぷらまんじゅう

 
世界遺産 石見銀山の街に伝わる
紅白のお祝い菓子
島根県の東西の中央部、日本海に面して位置する大田市。県東部の出雲文化、西部の石見文化が混在し、戦国時代後期から明治時代にかけては「石見銀山」の盛衰の影響を受けてきました。「石見銀山遺跡」は2007年に世界遺産に登録され、市内には多くの温泉や、市の南東部には大山隠岐国立公園に属する三瓶山を有することから、現在では、年間約150万人の観光客が訪れる街となっています。そんな大田市の中心部に「天ぷらまんじゅう」と呼ばれるお菓子があると聞き、早速訪ねてみました。
石見銀山の経営を支えた鉱山町、大森。建物の軒先には、幕府の直轄地であることを示す「天領」と書かれた行燈が連なり、当時の面影を残しています。   日本海に面して東西約2kmに広がる琴ヶ浜。歩くとキュッキュッと琴の音のように鳴る、「鳴り砂」の浜として知られています。


全国に点在する「天ぷらまんじゅう」
高遠から会津 そして石見へ


大田の郷土料理「箱寿司」。石見銀山が天領地として栄えたころ、江戸からやってきた代官が故郷の味を懐かしんでつくったのが始まりとされています。 <写真提供:大田市役所産業企画課>
「天ぷらまんじゅう」とは紅白のまんじゅうを底面同士で合わせ、天ぷら粉を付けて揚げたお菓子のこと。大田市には、他にも木枠に酢飯やかんぴょう、にんじん、椎茸などの具材を詰め、その上に薄い板を重ねて重石をして作る「箱寿司」と呼ばれる郷土料理がありますが、「天ぷらまんじゅう」は「箱寿司」と共に、この地域のお祝いごとやお祭りのおもてなしに欠かせないものでした。「昔は、すごいご馳走だったんですよ。今は、天ぷらまんじゅう以外にも、甘くて美味しいものが沢山ありますし、核家族化でおもてなしの機会そのものが減ったこともあり、なかなか作らなくなりましたね。」と郷土料理店の支配人。
石見吉永藩が陣屋を構えたとされる場所は、現在お寺となっています。
実はまんじゅうを天ぷらにする料理は、福島県会津地方や、滋賀県、長野県など、日本全国に点々とあります。「この鍵を握るだろうと考えられるのが、石見吉永藩なんですよ。」と地元の歴史に詳しい銀山のガイドの方。「天ぷらまんじゅうの発祥は長野で、会津には、1643年に保科正之が高遠藩(長野県)から会津藩に移る際に伝わりました。一方、その前に会津藩にいた加藤家は、1634年に石見(大田市)に吉永藩を立藩した後、旧領の会津藩から沢山の職人を呼び寄せたんです。その時に天ぷらまんじゅうも石見に伝わったのではないでしょうか。」とのこと。しかし、石見吉永藩はわずか39年しか続かず、1682年に加藤家は水口藩(滋賀県)に移り、その際に滋賀県に伝わったと考えられています。「あくまで、歴史的な事柄からの推測ですね。」とのことですが、天ぷらまんじゅうという1つのお菓子から、歴史のロマンを垣間見ることができます。


甘いまんじゅうと衣の塩味
切り口の色合いも楽しんで


郷土料理店の支配人に「天ぷらまんじゅう」の作り方を見せてもらいました。地元ではお祭りの時など限られた時に食べられるお菓子ですが、こちらの店舗では、郷土料理を集めた定食のデザートとして、常に提供されています。まんじゅうは、直径4cmほどの天ぷら専用のもので、予め紅白が底面で合わさっています。「少しパサパサしている位の方が、油を吸って美味しくなるんですよ。」と支配人。まんじゅうに粉をまぶし、天ぷらの衣をつけたら170℃の油で揚げていきます。「中まで火を通す必要はなく、衣が固まったら揚げあがりです。」とのこと。

天ぷらの衣は、えびや野菜など、まんじゅう以外に使用するのと同様のものを用います。   中温の油で2〜3分程揚げていきます。
白いまんじゅうにはこし餡、紅いまんじゅうにはうぐいす餡が入っており、色とともに味のコントラストも楽しめます。
油が切れたら、半分にカットし断面が見えるようにして盛り付ければ出来上がりで、紅白のまんじゅうと、中の餡の色のコントラストが鮮やかに見えます。こちらの店舗の天ぷらの衣には、ほんのり塩味が効いており、一口食べると衣の香ばしさがまず広がり、噛むごとに、塩味によって中の甘さがより引き立てられ、まんじゅうという素朴なお菓子が、しっかりと「特別な日のご馳走」に変身していました。
大田市の小さな天ぷらまんじゅうには、見た目の華やかさと、食べた人誰もが楽しい気分になる味、そして日本の食文化の歴史が詰まっていました。

(14.10.23)

●問合せは
大田市役所産業企画課
0854-83-8077
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