オリーブ収穫における工夫

収穫は手摘み式と機械式の二方式

オリーブの収穫方法は、大きく分けて手摘み式と機械式の2種類があります。手摘み式でもっとも丁寧な方法はミルキング(乳搾りのことです)といわれる木の枝を手でしごいて実を採る方法です。ただし、これは大変に手間と時間が掛かるため、木の下にネットを敷いて、熊手のような道具を使って実をかき落とす方が一般的です。大きな木については長い棒で叩き落とすこともありますが、この方法は実や枝を傷つけてしまう恐れがあります。一方、機械式の中心は専用装置によって幹や枝の部分に震動を与えて、バラバラと実を振り落としてしまう手法です。この種の装置には枝の剪定機のようなハンディーなタイプや、トラクターに組み込まれて捕集用ネットも同時に作動する大型のものまで様々な装置が開発されています。

機械収穫が使えない斜面地

収穫効率やスピードは機械式が手摘み式を圧倒しています。しかし、高い樹齢の太い幹の木の場合、木を震動させることが不可能であるため、どうしても手摘み式が主体とならざるを得ず、機械収穫でも回転式の櫛型装置や、枝を震動させる小型の装置などしか使えません。
また、トラクターなどの大型農機具が畑に入れなければならないので、機械が入れるような一定の植樹間隔も必要となります。丘の斜面地の木などでは機械作業を行うことは無理なのです。スペイン・アンダルシア地方のように大規模なプランテーションでは機械収穫を前提に栽培されているケースが多いのですが、丘陵地帯が多く、栽培面積も比較的狭いイタリア・トスカーナ地方のような栽培地ではバイブレーター式の機械収穫は不向きであると言えます。また、機械収穫が行われる以前に植えられたオリーブには、手摘み収穫の作業効率を上げるため、複数の木を根っこの部分で近接させて植え、あたかも大きな1本の木のように植えられたオリーブもあります。

まず、木を囲むように捕集用ネットをひろげます

次に専用装置で幹や枝の部分に震動を与え実を振り落とします

朝から晩まで収穫作業は続く

トスカーナ地方を例にとれば、オリーブの収穫は10月中旬から11月初旬に始まります。実の重さによる枝のしなり具合や、実の色付き程度などを手がかりに農家が長年の経験をもとに収穫の開始時期を判断することが多いようです。また、風味の好みによっても収穫時期が変わる場合もあります。例えば、苦味、辛味の強い若々しい風味を目指すのであれば早めの収穫を、ある程度熟してマイルドで落ち着いた風味を求めるなら年明けの収穫を、というように変わってきます。
一般に収穫は2~3カ月の間に行われますが、その間は朝から晩まで黙々と収穫の作業が続けられます。とくに手摘み式は農家だけでは人手が足りず、臨時の作業者を雇うことも珍しくありません。アフリカや東ヨーロッパから出稼ぎする作業者を雇い入れることも少なくないようです。このようにオリーブオイルの生産コストで最も大きな割合を占めるのがこの収穫作業だとも言われています。

まず、木を囲むように捕集用ネットをひろげます

次に専用装置で幹や枝の部分に震動を与え実を振り落とします