発見!ご当地「油」紀行

第39回 群馬県(館林市)ナマズの天ぷら

外見はグロテスク?!でも味は上品 水郷ならではの名物料理

4月中旬から5月上旬にかけて美しい花が咲き誇るつつじが岡公園。樹齢800年を超えるヤマツツジの巨樹群は世界でも類を見ません。
<写真提供:館林市役所>

昔話「分福茶釜」ゆかりの寺として知られる茂林寺。境内には多数のたぬきの像が配置されています。

“鶴が舞っている形”と例えられる群馬県。その南東部、ちょうど鶴の頭の部分に位置する館林市は1万株ものツツジが咲き誇るつつじが岡公園や、270品種40万本もの花菖蒲が咲く館林花菖蒲園など、多くの花の名所を擁する“花のまち”として知られています。また、南部の利根川、北部の渡良瀬川と2つの大河に挟まれ、城沼、多々良沼等の沼や湿地が点在する等日本有数の水郷地帯となっています。この豊かな水によってもたらされてきた名物が川魚料理。館林市やその周辺の街では鰻やどじょう、鯉等の川魚が昔から食べられてきました。中でも、珍しいのはナマズ。一体、どのような味なのでしょう。早速訪ねてみました。

捨てるところは全くなし 調理の工夫で丸ごと美味しく

かつて館林城が天然の要害として利用していたという城沼。現在でもナマズが獲れます。

日本におけるナマズを食する歴史は古く、平安時代の末期には料理していたという記録が残っている他、江戸時代には商業取引をしていたといいます。「ここは海が遠いですからね。ナマズなどの川魚は昔は貴重なタンパク源だったんだと思いますよ。」と、館林市内で老舗の天ぷら屋さんを営む女将さん。「私たちは、子供の頃から食べてきたけど、遠くから来たお客さんは、珍しがってナマズを注文するんです。」とのこと。

お刺身としても食べられるナマズ。身は綺麗なピンク色をしています。

ナマズは館林周辺で食べられている川魚の中でも特に油との相性が良く、天ぷらが最も一般的な食べ方で、他にお刺身でも食べることができます。天ぷらや刺身に使えない骨や内臓などは包丁等でたたいてミンチ状にし、他の具材と混ぜて棒状にして揚げた“たたき揚げ”にして食べられています。「ナマズは、捨てる部位が全くない魚なんです。」と女将さん。
現在、お店で出しているナマズは昔から食べられてきたニホンナマズと、外来種のアメリカナマズの2種類。アメリカナマズの方が体は大きいそうですが、味はどちらも淡泊でクセがないのだそうです。

花咲き衣に 上品な味の白身 軽やかな食感が 食欲をそそる

今回用いたのはニホンナマズ。体長50cmほどの大きさで天ぷら定食4人分程の材料しか取れません。

180℃の油で、3~4分程揚げていきます。

ナマズの天ぷらを調理していただきました。生きたまま仕入れたナマズを、板前さんが見事な腕前でさばいていきます。実際にさばいてみると、天ぷらに使える部位は全体の3分の1ほどになってしまいました。「さばいたばかりはプリプリと食感が良いけどね、少し時間が経つとアミノ酸が増えて、旨味が増すんだよ。」とのこと。今回はさばいたばかりの切り身と、予め用意してあった切り身、両方を天ぷらにしてもらいました。
切り身になったナマズに、天ぷらの衣を付けたら、中温の油に入れていきます。油の中に入れた途端、見事に天ぷらの“花”が咲き、3~4分ほどでカラッと揚げあがりました。

さくっと揚げあがった天ぷら。天つゆでも、塩でも美味しくいただけます。

ナマズそのものには臭みがなく、揚げ立ての天ぷらはふんわりと軽やかな食感です。予めさばいてあった切り身を揚げたものの方が、旨味が増し、よりふんわり感を楽しむことができました。水郷の名物、ナマズはそのグロテスクな外見からは想像もつかない上品な味わいとなっていました。

(15.2.24)

問合せは
館林市観光協会
0276-72-4111 (館林市役所花のまち観光課内)