発見!ご当地「油」紀行

第43回
高知県(室戸市)
浜アザミの天ぷら

港町・室津。戦後から昭和にかけては遠洋マグロ漁が、近年では沿岸漁業が盛んに行われている。

室戸市の名所のひとつ、津照寺(しんしょうじ)。弘法大師が807年に開基したと伝わる。

高知県・室戸市の早春の名物「浜アザミ」

四国地方で最大の面積をほこる、高知県。北は四国山地、南には太平洋が広がり、年間を通じて温暖な気候が特徴です。県の最東部に位置する室戸市は、かつて弘法大師が修行したと伝わる、歴史のある地。江戸時代の初期から長らく、クジラ漁の中心地としても栄えました。現在はキンメダイの好漁場として知られ、市の特産物にもなっています。そんな室戸市では、冬の終わりから春が旬の「浜アザミ」が名物だそうです。一体どのようなものなのか、現地で取材をしてきました。

新芽や柔らかい若葉から茎、根にかけてが可食部となる。写真にあるような大きく育った葉にはトゲができ、素手では触れない。

花はアザミ似、味はゴボウ!?

浜アザミとはキク科の野草で、室戸の海岸地帯に自生する植物。アザミに似た花をつけることから、その名で呼ばれてきたようです。新芽や若葉、茎、根が食用となり、ゴボウに似た香りがあることから「浜ゴボウ」の別名も。砂地に生えるので、とても簡単に引き抜けるそうです。主に天ぷらで食べられることが多いようですが、きんぴらや白和えにしたり、すき焼きに入れたりすることもあるようです。

さっくりと溶いた生地を、衣が厚くならないようにつける。

たっぷりの油を高温で熱し、サッと軽く揚げるのがコツ。サラダ油のようなクセのない油が向いている。

野趣を感じさせる、ほろ苦さがたまらない

浜アザミの天ぷらは、塩か天つゆにつけて食べるそうです。「浜辺で採れたものを採取者から直接買ったり、行商の方から買ったりします。近頃は人気が出てきたので、栽培している農家さんもいますよ」と地元の飲食店の方。

揚げたてを食べてみたところ、たしかに香りは、ほんのりとゴボウのよう、けれども食感はゴボウよりも柔らかく、味は山菜のようなほろ苦さがありました。今回味わった浜アザミは自生のもので、栽培されたものと比較すると、香りが強いそうです。
「浜アザミが出始めると、冬も終わりだなぁ、春がやってくるなぁと思いますね」と地元の方。室戸の一帯では「春を告げる味」として親しまれているそうで、室戸の春は浜アザミと共に始まるのだと、現地をたずねて実感しました。

(21.3.19)

協力
料亭 花月 
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