発見!ご当地「油」紀行

第47回
山口県(上関町)
あぶらめし

山口県の港町に伝わる「あぶらめし」

今回は、本州西端に位置する山口県を訪ねました。三方を海に囲まれフグやタイ、イカ、ハモなど多くの水産物が水揚げされています。また、県央部には山々がそびえ野菜や果物も豊富で、古くから美食文化が栄えてきたことで知られています。

県最南端に位置し、多数の島々からなる上関町は、魚のすり身の「天ぷら」や不老長寿の「コッコーの実」といった名物の他、「あぶらめし」なる郷土料理があるとのこと。どのようなものなのか、現地で取材をしてきました。

山口県の名所のひとつ、岩国市の錦帯橋。木造の風情あるたたずまいが魅力だ。

上関町は室津半島の先端部と長島、祝島、八島などからなり、かつて北前船などが寄港し、瀬戸内の海上交通の要所として栄えてきた。

たっぷりの油で炒め煮にした野菜をごはんに混ぜ込んだ「あぶらめし」。

あぶらめしとは、炊いたごはんに、細かく刻んだ野菜をたっぷりの油で炒めて醤油などで味付けした具材を混ぜ込んだもので、炒飯とは異なるものでした。

あぶらめしは八島という島で主に食べられてきたそうです。町内の飲食店でメニューとして出されているお店に作り方を見せてもらいました。

まず、にんじん、きくらげ、ごぼう、椎茸を細かく刻みます。

鍋に具材が軽く浸るぐらいの植物油を入れて、170~180度に熱します。

刻んだ野菜を油に入れて、炒りつけていきます。

「たっぷりの油で煮るような感じです」とお店の方。

醤油、酒、みりん、砂糖を加えて、全体に味をなじませたら、そのまま冷まします。

野菜のエキスや旨味がしっかり炊き出された油ごと、熱々のごはんに混ぜ込んで、完成。

おにぎりにしていただきました。

食べてみると、意外とさっぱりしているのに驚きます。ごぼうやきくらげなど具材の食感がよく、油のコク、甘辛い醤油味が絶妙に合わさり、とてもおいしい混ぜごはんでした。

「食料の保存が難しい時代に、たっぷりの油で野菜を炒めておくことで、長くもたせるようにしたのではないでしょうか」とお店の方。
具材は他に、切り干し大根を入れる人もいるよう。油で炒め煮にして保存性を高め、乾物も利用して作るアイディア料理だったのでしょうね。

地元の方々にうかがうと、近年あぶらめしを作る人はかなり少なくなっているとのこと。「知らない人も増えています。だからこそ大切に残していきたい」と、食文化継承の思いも教えてくださいました。

(23.3.31)

協力
上関海峡温泉 鳩子の湯
0820-62-1126