発見!ご当地「油」紀行
第52回
山形県(置賜地方)
俵型油揚げ

豊かな自然に育まれた独自の食文化を持つ「置賜地方」
東北地方の日本海側に位置する山形県。その南部に位置する置賜(おきたま)地方は、米沢市を中核とした3市5町で構成される、四方を山々に囲まれた盆地です。夏は暑く冬は雪深い内陸性気候のもと、厳しくも豊かな自然環境が、独自の食文化を育んできました。
この置賜地方には、郷土料理「俵型油揚げ」があるとのこと。どのようなものなのか、現地で取材をしてきました。

広大な置賜盆地を見渡せる熊野大社。

山形県南部を走る全長約30.5kmのフラワー長井線。
ふっくらと肉厚で柔らかい油揚げ
俵型油揚げとは、水分を絞って滑らかに練り上げた豆腐を俵型に成型し、油で揚げたものでした。「この独特な形状の油揚げは、全国でも置賜地方だけで作られています。曾祖母の代から俵型油揚げを作り続けていますが、なぜ俵型なのかはわかりません」とお店の方が教えてくれました。
肉厚でありながら柔らかい食感が特徴の俵型油揚げは、昔から煮物や汁物に重宝されてきました。しかし、「昔ながらの製法は手間がかかるため、近年では俵型油揚げを作る豆腐店が減少しています」とお店の方。そこで実際に作るところを見せていただきました。

自家製の豆乳に通常より多くのにがりを加え、固めの豆腐を作る。

圧搾機で水分を絞り、カッテージチーズくらいの柔らかさになった豆腐を、餅練り機で滑らかに練り上げる。

手のひらサイズの俵型に成型する。

油揚げを大きくふっくらと膨らませるため、まず110度の油で約15分揚げる。その後、形を安定させ、冷めても縮まないようにするため、140度の油でさらに約15分揚げる。

揚げたてをカット。カットした断面は、フランスパンを彷彿とさせるスポンジ状になっていました。
揚げたてをいただきました。口に入れるとふんわりと柔らかい食感ながらも、肉厚で身が詰まった噛み応えがあります。噛むほどに大豆本来の自然な甘味が広がりました。
「甘じょっぱく煮てごはんのおかずにしたり、刻んで味噌汁や和え物に入れることも。フライパンでこんがり焼いてサッと醤油をかけてもおいしい」とお店の方。他の地域では販売されていないため、遠方から「まとめて送ってほしい」との注文も入るそうです。
昔から作られてきた油揚げを、ファストフード感覚で手軽に楽しめるアレンジ料理もあり、幅広い世代に親しまれています。この置賜地方の貴重な食文化が、これからも多くの人々に親しまれつつ、受け継がれていってほしいです。

お店おすすめの食べ方のひとつ、ホットドックのような「ホットきつね」。
(25.4.24)
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