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メイクアップ化粧品向け製品の開発
メイクアップ化粧品の一種である口紅は、一般的に約2割が固形の油脂(ワックス)、約7割が液体の油脂(液状油)で構成されています。口紅をスティック状に保つワックスと、さまざまな感触の液状油を適切に組み合わせ、唇にムラなくなめらかに塗れるよう工夫されています。
一般的な口紅には、主に石油由来のワックスが使用されますが、最近では環境保護への意識の高まりや、より自然由来成分を求める消費者ニーズの増加により、植物由来の天然ワックスが注目を集めています。しかし、植物由来の天然ワックスによる口紅にはいくつかの課題が存在します。例えば、硬さが不足していることや夏の暑さに弱く溶けやすいことといった特性があり、製品として十分な耐久性を持たせることが難しいといった課題が挙げられます。当社はお客さまのニーズに応えるため、口紅として耐久性を持たせることができる植物由来の新規ワックスの開発に取り組みました。



図1 一般的な口紅を構成するワックスと液状油の割合
口紅の耐久性を高める植物由来原料の開発
口紅の硬度には、口紅を形づくるワックスの結晶構造が関わっています。均一で細かい板のような形をしたワックスの結晶が互いに接触し合い、図2のイラストのような“カードハウス構造”を形成すると、口紅の内部に液状油と着色剤を保持しながら、適度な硬度を保つことが可能になります。唇に塗布した際は、圧力により塗布部分だけこの構造が壊れて、保持されていた液状油とともに着色剤が染み出し、なめらかな感触で、均一に色をつけることができます。
石油由来のワックスは強固なカードハウス構造を作ることで夏の暑さに強く形を保ちやすいという特性を生むため、口紅を折れにくく溶けにくくすることができ、実際の製品によく利用されています。

図2 口紅の内部構造モデル:カードハウス構造
(出典:M. Shibata, J. Jpn. Soc. Color Mat.78, 310-314 2005)
一方で、植物由来のワックスを使った耐久性の低い口紅では、図4. Aの写真のように図2で示したような石油由来のワックスのカードハウス構造が見られませんでした。この構造の違いにより、植物ワックスを使った口紅は硬さが出ず、折れやすくなります。 そこでワックスが形成する構造の違いに着目し、当社独自のエステル合成技術により、植物由来の新規エステルワックスを開発しました。この新規ワックスに特定の植物由来ワックスを組み合わせると、細かな板状のワックス結晶へと変化し、緻密なカードハウス構造を形成させることができました(図4. C)。新規ワックスと特定の植物由来ワックスを使用することで、カードハウス構造を形成し、口紅に必要な耐久性を持たせることができるようになりました。

図3 口紅の硬度



図4 植物ワックスの結晶形状変化 電子顕微鏡写真
A:植物ワックス B:新規ワックス C:植物ワックス+新規ワックス
(写真:共同研究先 東京工科大学撮影)
温度変化に強い新規液状油の開発に成功
口紅は日常的な温度の上がり下がりにも弱い性質があります。温度が上がると、カードハウス構造を構成するワックスの一部が液状油に溶け出し、その後温度が下がると、溶け出したワックスが再び結晶化します。この現象が繰り返されると、口紅のカードハウス構造が変化し、硬度の低下や口紅の使い心地の変化、折れやすくなるといった品質の低下につながってしまいます。
そこで、高温下でもカードハウス構造からワックス成分が溶けにくくなるよう、周囲に存在する液状油に着目しました。液状油を分子レベルで設計し、ワックスが溶けにくい性質を持たせることで、自然由来指数*が高く、口紅の耐久性を向上させる新規液状油の開発に成功しました。
*製品に含まれる自然由来の原料の割合を示す指標
この液状の新規油脂を使った口紅は、夏の高い気温や冬の寒い気温を想定した保存試験でも硬さがほとんど変わらず、なめらかに伸びて塗りやすいという特長を有することに加えて、口紅の色がより鮮やかになることも明らかとなりました。
植物由来の製品でお客さまのニーズに応える
これらの植物由来の製品は、実際に高品質で機能性に優れた口紅に採用され、商品化された事例もあります。これからも当社ではメイクアップ・スキンケア化粧品などの性能の向上とお客さまのニーズに応える原料開発と技術提案を進め、人々の生活の質の向上に貢献していきます。
