NISSHIN OilliO "植物のチカラ"

Case Studies 研究・技術開発事例

農研機構との共同研究 フライ食品のおいしさを表現する評価用語体系の構築
フライ食品のおいしさを表現する評価用語体系の構築~農研機構との共同研究~

フライ食品のおいしさの精密な官能評価に向けた挑戦

コロッケやからあげ、てんぷらといったフライ食品のおいしさを追求することは、当社にとっての重要な取り組みテーマの一つです。また近年、中食・外食需要の増加からフライ食品のおいしさに対するニーズがさらに高まっています。そこで当社は、フライ食品のおいしさを構成する複雑な要素(衣のサクサクした食感や、食欲をそそる香り、見た目等)を数値化することに挑戦しています。
フライ食品のおいしさという価値を向上させるには、分析機器による評価だけではなく、「人が実際に食べてどう感じるか」という官能評価の視点が重要です。官能評価は、フライ食品が消費されるまでのあらゆる過程(原料メーカーや食品メーカーにおける研究開発・生産~加工・流通過程および、その先の消費者が購入して食べる消費過程)において、おいしさ価値についての共通理解を形成するために重要となっています。
しかし、これまでは官能評価に用いる言葉(評価用語)の定義や用途が人や組織によって違うことで、複数名での感覚の共通認識化が難しくなったり、再現性のある官能評価ができなくなるなど、官能評価の精度の低下が課題となっていました。

フライ食品のおいしさを表現する評価用語体系の構築

そこで当社はフライ食品の官能評価の精度向上とコミュニケーションの円滑化を目指して、フライ食品の官能評価用語体系を構築することを目的に、官能評価系構築について多くの実績を持つ農研機構と共同研究を実施しました(図1)。

図1 本研究の概略図

本研究ではまず代表的なフライ食品であるコロッケを対象に、そのおいしさに関連する評価用語体系の開発に着手しました。評価用語体系は、表現にばらつきが生じやすいおいしさを体系的に評価し、品質と課題を共通認識化するために重要となります。お酒(ワインや日本酒等)や調味料(醤油、だし等)、オリーブオイル等、風味がおいしさに大きく寄与する食品については、評価用語体系の構築事例が既に多数あります。一方、コロッケなどのフライ食品は、複数の食材が使用されており、その食感がおいしさに大きく寄与する食品です。そのため、おいしさの要素が非常に複雑であることから評価用語体系の構築事例がほぼ無く、試行錯誤を伴う挑戦的な取り組みとなりました。
用語体系構築のために、まずは市場に流通しているさまざまなコロッケの特徴を網羅するように数十種類のモデルコロッケを調製し、これらを熟練評価者が喫食したときに感じる特徴(言葉)を集めました。これにより外観/喫食前の香り/喫食中の風味/食感について約600 語の表現を収集しました。次にこれらの表現についてディスカッションや試食を数多く重ねる中で整理、統合、分類し、最終的に各用語に定義を付けて 75 語からなるコロッケの官能評価用語体系を構築しました(図2)。

図2 コロッケの官能評価用語体系(抜粋)

最後に、開発した評価用語体系の性能を評価するために、評価用語体系に基づき市販の十数種類のコロッケを対象とした分析型官能評価を実施しました。その結果、開発した評価用語体系は各種コロッケの特徴を的確に捉えており、おいしさに関わるフライ食品の品質特性を数値化する官能評価手法としての有用性が示されました。

フライ食品における油脂の魅力を引き出す研究開発への展開

構築された評価用語体系は、今後、フライ食品の消費・開発・研究・生産・流通に携わる多くの人々の間のコミュニケーションを助けるだけでなく、フライ食品のおいしさに関わる特性の評価精度や共感度を向上するツールとしての利用が期待されます。これにより製品開発のスピードアップや、より精緻な品質管理、食用油脂がフライ食品のおいしさに与える影響や機能の詳細な可視化が可能となり、フライ食品における油脂の魅力を最大限に引き出すことが期待できます。当社は、食品のおいしさを精密に評価する技術を究め続けることで、よりおいしい食品や新しいおいしさを持った食品を創り出し、人々により豊かな生活を届けるための研究を推進していきます。