NISSHIN OilliO "植物のチカラ"

Case Studies 研究・技術開発事例

酵素のはたらきを利用した 環境にやさしい新しいエステル交換法
酵素のはたらきを利用した環境にやさしい新しいエステル交換法

お客さまが求める油脂を、環境にやさしく安全につくりたい

ニーズが多様化する中で、風味などの特性はもちろん、健康機能や調理のしやすさといったさまざまな特長を持つ油脂が求められるようになりました。そうした要望に応えるためには、油脂の特性を変える加工技術が必要になります。

油脂加工技術の中でも主流である化学的なエステル交換法は、生産効率に優れ、大規模な製造に適した技術として広く活用されています。ただ近年では、サステナビリティの観点から、既存の方法よりも持続可能性に優れた新しい技術が求められます。エネルギー効率や安全性の向上、環境負荷の軽減、生産工程の最適化などに取り組むことで、次世代の油脂加工技術への道筋が拓かれます。

酵素のはたらきに注目しました

環境負荷が少なく、なおかつ安全性やエネルギー効率にも優れた油脂加工技術を実現したい。そこで私たちが着目したのは、酵素のはたらきを利用したエステル交換法(酵素触媒法)です。

酵素触媒法は、酵素の触媒作用を利用して油脂の構造を組み換える技術です。酵素は特定の物質にだけ働きかけるという優れた性質があるため、より精密で効率的な反応を起こすことができます。また、比較的低めの温度で反応が進むためエネルギー消費量を大幅に抑えられ、副産物や廃水も少ないことから環境負荷を大きく低減できます。常温・常圧の穏やかな条件下で反応することから、製造工程の安全性も高められるため、人にも環境にもやさしい、持続可能な油脂加工技術として、酵素触媒法は大きな可能性を秘めています。

酵素触媒法の課題を克服、新たな技術を確立

酵素触媒法には多くのメリットがある一方で、実用化に向けていくつかの課題もありました。酵素は温度や水分量、pHの変化にとても敏感で、条件が変わると活性を失う「失活」のリスクがありました。また、反応速度が比較的穏やかで、工程が長時間化することも課題の1つでした。

この課題を乗り越えるため、私たちはまず、微量の水分環境でも安定して機能する酵素を選択。そして、その酵素を独自の技術で粉末化することで、従来にない迅速かつ効果的なエステル交換反応の仕組みを構築しました。この粉末酵素は繰り返し利用できるため、長期間にわたり安定した性能を維持でき、従来法と比較して経済的なメリットが大きい点も特長の1つです。

こうした改良により、環境負荷を低減できると同時に、安全性・効率性にも優れ、そして大きな経済的メリットも兼ね備えた、私たちが目指す理想の油脂加工技術が完成しました。

開発した技術を、暮らしに役立つ「かたち」に

私たちは、技術を開発するだけでなく、それを実際に活用し、社会に役立つ「かたち」にすることを大切にしています。

この新しい粉末酵素エステル交換技術も、健康機能と調理機能を両立した中鎖脂肪酸入りの食用油※や、チョコレートの品質向上と安定供給に貢献するココアバター代用脂など、実際の商品開発に活かしています。

※(参考)体脂肪が気になる方に 日清MCTリセッタ

粉末酵素を活用した油脂加工技術は、より環境にやさしく持続可能な製造工程を実現し、穏やかな反応条件での加工や、廃水処理が不要なクリーンなプロセスを可能にしました。このような技術開発を基盤として、サステナブルな視点を取り入れ、健康的で高品質な油脂製品を安定してお届けしています。

私たちは、油脂の特性を革新的に変える技術開発を通じて新たな可能性を切り開き、“生きるエネルギー”をすべての人にお届けしていきます。

本成果は、「Journal of the American Oil Chemists’ Society, Volume 102, Number 4, April 2025」に掲載されました。「“Powdered” lipases as industrial catalysts: Production of Interesterified, structured lipids