Case Studies 研究・技術開発事例

オリーブオイルに含まれるポリフェノールの健康性は日本人にも有効か

オリーブオイルは、健康的な食事として知られている地中海食の主要な食用油であることから、その健康機能に関して、欧州を中心に数多くの研究が実施されてきました。その中で、オリーブオイルに含まれるポリフェノール（オリーブオイルポリフェノール）について、動脈硬化症の進展に関与する低密度リポタンパク（LDL）の酸化を抑制することが報告されています。一方で、これまで日本人を対象にオリーブオイルポリフェノールのLDL酸化抑制機能を評価した大規模な臨床試験は実施されておらず、地中海沿岸国の人々とは生活環境や食習慣が異なる日本人に対しても同様の機能を発揮するかは不明でした。そこで、日本人を対象としたオリーブオイルポリフェノールのLDL酸化抑制機能を評価する臨床試験を実施しました。

日本人を対象とした大規模な臨床試験により、オリーブオイルポリフェノールの健康性を検証

【研究の方法】35～64歳の健康な日本人男性80名を対象とし、ランダム化二重盲検クロスオーバー試験※1を実施しました。1日あたり14gのエキストラバージンオリーブオイル（オリーブオイルポリフェノールを5.0mg含む）を3週間継続して摂取した後の血中酸化LDLを測定し、精製オリーブオイル（オリーブオイルポリフェノールを0.3mg含む）摂取後の血中酸化LDLと比較しました。
【研究の結果】最終的に試験を完了した77名の全体集団のデータを解析した結果、特に35～50歳の集団でオリーブオイルポリフェノール摂取による有意なLDL酸化抑制機能が認められました。

※1　ランダム化二重盲検クロスオーバー試験：
臨床試験のデザインの一つです。「ランダム化」とは、被験者を無作為にグループに割り当てることを意味します。これにより、偶然により生じるバイアスを減らすことができます。「二重盲検」とは、被験者と研究者の両方がどの試験食を摂取しているかを分からないようにすることを意味します。これにより、研究者の意識的あるいは無意識的なバイアスを排除することができます。「クロスオーバー」とは、被験者が複数の試験食を順番に摂取することを意味します。たとえば、グループAは最初に試験食Aを摂取し、一定期間後に試験食Bに切り替えます。一方、グループBは最初に試験食Bを摂取し、一定期間後に試験食Aに切り替えます。これにより、被験者間の個人差を考慮しながら、試験食の効果を比較することができます。

本研究の成果は、2024年10月1日にオンライン国際科学雑誌「Nutrients」に掲載されました。（S.Tsujino, S. Sadamitsu, et al. Age-Related Effects of Olive Oil Polyphenol Ingestion on Oxidation of Low-Density Lipoprotein in Healthy Japanese Men: A Randomized Controlled Double-Blind Crossover Trial, Nutrients, 2024, 16, 3342）

すべての人の健康に貢献する

当社は「日清オイリオグループビジョン2030」の6つの重点領域において「すべての人の健康」を掲げ、脂質栄養の知見を軸とした商品・サービスを提供することによって、人々の生涯にわたり、活力のある健康的な生活に貢献することを目指しています。日本は世界でも有数の長寿国ですが、動脈硬化性疾患は日本人の平均寿命および健康寿命の延伸を阻害する大きな要因となっています。本研究により、日本人がオリーブオイルを食生活に取り入れることによりオリーブオイルポリフェノールが動脈硬化症の予防に寄与する可能性が示されました。今後も「すべての人の健康」に貢献する脂質栄養の可能性を追求していきます。