環境目標2030

TCFD提言への対応

日清オイリオグループは、事業活動を通じた社会課題の解決により、社会との共有価値を創造し、当社グループの持続的な成長と社会の持続的な発展(サステナビリティ)の実現を目指しています。当社グループの事業活動は植物資源をベースとしており、植物の生育に大きな影響を与える気候変動への対応は経営の重要テーマです。そのため、2021年3月にTCFD提言に賛同を表明、2022年度より、気候変動に伴うリスク・機会の分析、財務影響などのシミュレーション等を通じた情報公開を実施しています。なお、先般TCFDからISSBに気候関連の開示規制業務が発展的に引き継がれたことを受け、今後のIFRS S1/S2の日本国内への導入動向も注視しつつ、引き続き気候変動対応関連の開示の充実化を図って参ります。

(1) ガバナンス

  • 経営上の重要課題は、取締役会にて審議し意思決定を行っています。気候変動を含むサステナビリティ課題に関する基本方針・戦略・施策については、取締役会が設置する委員会である経営サステナビリティ委員会による審議を経て、取締役会が承認しています。なお、2022年度の経営サステナビリティ委員会(※2022年度までは「サステナビリティ委員会」、2023年度に「経営サステナビリティ委員会」へ名称変更)の開催は2回、また、取締役会には2回報告しています。
  • 取締役会は気候変動課題の解決に対して責任を持ち、目標進捗の監督を行います。また、経営サステナビリティ委員会と連携、必要に応じて外部有識者を通じて十分な知見を獲得し、積極的に課題解決に取り組みます。
  • 気候変動課題解決への貢献に対して提供されるインセンティブは、ESG目標の達成度に基づき取締役(社外取締役を除く)の役員報酬の支給基準に反映されています。
  • 気候変動対策として、環境目標2030の設定、専門部署(経営サステナビリティ推進室、環境ソリューション室)を設置しています。
  • なお、監督と執行の分離の観点では、取締役会は気候関連課題に対する監督を、各部門/事業所/グループ会社等が気候関連課題の解決策を実行する役割分担となっています。

▼図1:サステナビリティ推進体制(コーポレートガバナンス体制図より)

  • 1.常勤監査役は、経営サステナビリティ委員会およびリスクマネジメント委員会、事業戦略会議にオブザーバーとして出席
  • 2.上記以外に、常勤監査役とコーポレートスタッフ部門との定期的な情報交換・情報共有化等、監査の実行性確保に向けた会議体を設置
  • 3.経営サステナビリティ委員会は、取締役7名、常務執行役員1名で構成、議長は代表取締役社長

(2) 戦略

当社グループは、2021年度より、2030年に実現すべき姿「日清オイリオグループビジョン2030」と、その最初の4か年の取り組みとなる中期経営計画「Value Up +」をスタートさせました。「ビジョン2030」では、当社グループの強みの中核である植物資源をベースとした油脂をさらに磨き上げ、成長の原動力とし、健康やおいしさ、美の多様な価値を創出いたします。そのため、事業基盤となる地球環境の保全・回復に努め、原料のサステナビリティをグローバルトップレベルに深化させていきます。また、2050年までに「カーボンニュートラル実現」を目指すための長期戦略の検討を進めています。

  • こうした戦略のレジリエンスを更に向上させていくため、気候関連のリスク・機会の特定・評価および対応策について継続的に検討しています。
  • 検討のアプローチとしては、まず気候関連のリスク・機会を特定し、定性的に影響度等を評価し、そのうち重要性や分析データの入手可能性等を考慮して、より詳細な分析を進めています。
  • この一連の検討プロセスにおいては、「気候変動の進行が抑制された世界」(1.5℃/2℃シナリオ:産業革命以降の世界平均気温上昇幅が1.5℃/2℃程度に抑えられた世界)と「気候変動が進行する世界」(4℃シナリオ:産業革命以降の世界平均気温上昇幅が4℃程度上昇する世界)の対照的なストーリーを考慮しています。一般的に、1.5℃/2℃シナリオでは炭素税を含む各種法規制の強化や消費者嗜好の変化が顕著になる一方、4℃シナリオでは気候変動が深刻化し風水害等の強度・頻度が高まります。

(2-1)気候関連リスクおよび機会の特定・評価

  • まず、下表1のとおり、当社グループにとっての短期/中期/長期の気候関連のリスクと機会を特定するとともに、それらの財務上の影響について定性的に評価しました。
  • 事業活動への影響が大きいリスクとして、炭素税によるコスト増加やCO2排出枠購入費用の発生、脱炭素関連の設備投資費用の増加、持続可能性に配慮した購買行動の高まりや自然災害が頻発・激甚化することに伴う原料調達コストの増加、ならびに製品価値の低下による消費者離れに伴う売上減少、生産拠点が被災した場合は製品供給能力の低下とそれに伴う売上減少等が想定されます。
  • 事業活動への影響が大きい機会として、エネルギーや水等の資源効率の向上により生産コストを削減できる可能性や、消費者・顧客の購買行動の変化に対応した商品の開発・販売により売上が増加する可能性が挙げられます。

▼表1: 気候関連リスクおよび機会の一覧

【表中用語の定義/考え方】

  • 「発生時期」:当該リスク/機会が「最短でいつ発生し得るか」を示しています。なお、短期=現在~5年未満、中期=5年以上10年未満、長期=10年以上を目安として定性的に判断しています。なお、既に発現しているリスク/機会については「短期」に含めています。この時間軸の定義は、当社グループの経営戦略(短期戦略として2024年までの「Value UP +」、中期戦略として2030年までの「日清オイリオグループビジョン2030」)における時間軸の考え方と整合的です。
  • 「発生可能性」:当該リスク/機会が実際に発生する可能性や確率を示しており、定性的に3段階(高/中/低)で評価しています。なお、既に発現しているリスク/機会については「高」に含めています。
  • 「影響度」:当該リスク/機会が現実のものとなった場合に当社に及ぼす影響の度合いを、主に財務的影響の観点から定性的に3段階(大/中/小)で評価しています。
  • 「★」:試行的に影響度の定量化(金額換算)を実施したものを示しています。
分類 財務上の影響 影響度 発生
可能性
発生時期
短期 中期 長期
リスク 移行 政策・法規制 炭素税の上昇により、エネルギー・容器・輸送等のコストが増加するリスクがあります。また、企業のCO2排出量取引制度の導入により、排出枠購入費用が発生するリスクがあります。(★)
トレーサビリティに関わる法規制強化を受けて、認証原料に対する需要の増加に伴う原料価格の上昇、設備投資費用の発生、事務コストの増加、法令違反による罰金等の発生および売上への悪影響、といったリスクがあります。
気候変動による社会環境の変化や法規制の強化の影響により、サプライチェーンでの法令違反や森林破壊・人権問題による訴訟を受けるリスクがあります。
従来型の環境負荷の高い農法からの転換や土地利用規制の強化により、生産量の低下、人件費の増加等が生じ、原料価格が上昇するリスクがあります。(★)
技術 脱炭素技術の開発・普及により、生産体制の脱炭素化に向けた大規模な設備導入が求められ、設備投資費用が増加するリスクがあります。また、投資が想定通りの効果を発揮しない、あるいは、資金不足によりブレイクスルー的な新技術を導入できないリスクがあります。
市場 持続可能性に配慮した購買行動の高まりにより、環境に配慮した大豆、菜種、パーム等の原料価格が上昇するリスクがあります。また持続可能性を担保できない場合、製品価値の低下から消費者離れに繋がり、売上が減少するリスクがあります。
評判 ESG投資が加速する中で、当社グループの関連する取り組みが遅れた場合や情報開示が不十分な場合、株価の低迷や融資が停滞するリスクがあります。 また、意図しない風評の拡散により企業価値が低下するリスクがあります。
物理的 急性 自然災害の頻発・激甚化により、原料産地が被災し、収穫減に伴う原料価格の高騰リスクがあります。また、生産拠点が被災した場合は、生産・販売・物流能力が一時的に低下し、売上が減少するリスクがあります。(★) また、意図しない風評の拡散により企業価値が低下するリスクがあります。
慢性 気象パターンの変化(気温上昇、降水量変化等)が、大豆やパームの発育に悪影響を与え、生産量が減少し原料価格が高騰するリスクがあります。また原料の品質・安全性や製品の安定供給に悪影響を与えるリスクがあります。 また、意図しない風評の拡散により企業価値が低下するリスクがあります。
機会 資源の効率性 資源効率の向上(エネルギーや水消費量の観点で効率的な機器の導入や高度な生産管理、等)により、生産コストが削減できる可能性があります。
プラスチックのリサイクル促進、バイオプラスチックやプラ代替容器への切替により、資源循環を推進することは、容器包装にかかる調達の安定化や商品の付加価値ひいては顧客評価の向上に寄与する可能性があります。
エネルギー源 再生可能エネルギーの活用により、CO2排出量(Scope1、2)を抑えた製品を販売し、付加価値を訴求する事で、サプライチェーン排出量削減を求める顧客の満足度向上と売上増加に繋がる可能性があります。
製品・サービス市場 消費者・顧客の購買行動の変化(エシカル消費/健康/自然派志向、等)に対応した製品(植物性由来の化粧品、機能性食品、認証パーム油、等)の開発・販売により、売上が増加する可能性があります。
強靭性
(レジリエンス)
乾燥や熱耐性型の農産物普及により、気候関連の被害(熱波、干ばつ等)による原料生産量低下や供給不安定化等の軽減に繋がる可能性があります。
BCPの強化により、気候変動に由来して自然災害が頻発化・激甚化したとしても、緊急時の製品供給体制を維持できることで、売上の安定化・増加、企業の社会的価値向上および株価上昇、資金調達の円滑化等に寄与する可能性があります。
  • 上記で特定したリスクのうち、今年度は特に、「①原材料の収量および価格の変化」「②炭素税・ETS等によるコスト増」「③気象災害による生産停止に伴う利益減」について、詳細に分析しました。具体的な検討にあたっては、IPCC、IEA、FAO、NGFS*等の各国際機関の公表するシナリオにおける定性/定量情報(例えば穀物価格の見通し等)を参照しました。
  • (略語注)
  • IPCC :気候変動に関する政府間パネル(各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的とした政府間組織)
  • IEA :国際エネルギー機関(第一次石油ショックを機に設立されたエネルギー安全保障等のエネルギー政策全般をカバーする国際機関)
  • FAO :国連食糧農業機関(食料の安全保障と栄養、作物や家畜、漁業と水産養殖を含む農業、農村開発を進める国連機関)
  • NGFS:気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するための中央銀行および金融監督当局の国際的なネットワーク)

①原材料の収量および価格の変化

まず、主要原材料別の収量の変化見通しは次のとおりです。いずれの原料においても基本的に増加傾向が見られます。

大豆 菜種 パーム カカオ
直近実績(2012)を100とした場合の、
2050年BAU(成り行き)下での全世界合計収量
143 150 158 126

次に2℃および4℃シナリオの違いによる影響を把握するため、FAOの「2050年のBAU(Business As Usual:成り行き)における単位当たり収量を100とした場合の2050年の2℃および4℃シナリオでの変化」を、下図2の通り整理しました。右上表の区分に従って凡例で示しています。

▼図2:原材料の収量変化リスク

  • ※ FAOの収量シナリオ値に基づいた分析結果を示しています。
  • ※ 北米、南米、東南アジアの地図上の位置は特定の国を指すものではありません。

以上の分析から、まず収量面については、基本的に2050年に向けて世界全体でみれば増えていくものの、2℃および4℃シナリオとBAUシナリオを比較すると、4℃シナリオでは大豆と菜種で収量が維持または増加する生産地域がある一方、2℃シナリオではどの原材料・生産地域でも収量が減少する影響があることが示されました。この原因としては、シナリオに含まれる様々な要因が複合的に影響しているものの、おそらく地域/国によっては気候条件の悪化以上に政策的な要因(土地利用規制や環境負荷の高い農法に対する規制等)が大きく影響するためと推察されます。なお、今後は供給面に加えて需要面の動向も踏まえ、両観点から分析を深めていきます。

一方、原材料の「価格」面の変化については、主要原材料の一つである大豆の主要生産国である米国とブラジルを対象とし、NGFSによる1.5℃相当シナリオを用いて2030年と2050年の大豆価格の変化による年間調達コスト増加額を算出しました。このシナリオ下での価格変化は炭素価格や生産効率向上のコストを反映したものであり、算定結果は移行リスクによる財務影響を示しています。

▼表2:「農業における脱炭素による原料大豆価格上昇」の財務算定結果

シナリオ 2030年調達コスト増
(億円/年)
2050年調達コスト増
(億円/年)
1.5℃ 米国 131 210
ブラジル 34 49

2020~2022年の平均年間購入量を基に価格変化の影響金額を算出

価格については1.5℃シナリオで米国・ブラジル産の大豆がともに上昇し、財務影響算定を行ったリスク項目の中で最も大きな影響(2030年に合計165億円/年、2050年に合計259億円/年)となりました。今後、菜種、パーム油等の価格変化による影響も検証していきます。

②炭素税・ETS等によるコスト増

「炭素税・ETS等によるコスト増」については、当社グループで温室効果ガス排出量が大きい日清オイリオグループ株式会社(日本)とISF(マレーシア)を対象に、IEAのWorld Energy Outlook 2022におけるAPSシナリオ(Announced Pledges Scenario、2.0℃相当)およびNZEシナリオ(Net Zero Emissions by 2050、1.5℃相当)下の炭素価格を用いて、2030年と2050年の炭素価格による年間負担額をそれぞれ算出しました。この2社で当社グループが管理しているScope1、2排出量の96%以上を占めています。

▼表3:「炭素税・ETS等によるコスト増」の財務算定結果

シナリオ 自社対策 企業名 2030年負担額
(億円/年)
2050年負担額
(億円/年)
2.0℃ 現状維持 日清オイリオグループ(株) 27 40
ISF 8.4 33
削減目標を達成 日清オイリオグループ(株) 16 0
ISF 4.0 0
1.5℃ 現状維持 日清オイリオグループ(株) 28 50
ISF 19 42
削減目標を達成 日清オイリオグループ(株) 17 0
ISF 9.1 0

「現状維持」:2022年度のCO2排出量で算定
「削減目標を達成」:2030年は排出量50%削減(2016年比)、2050年は排出量ゼロで算定
「炭素価格」:IEA WEO2022を参照

2030年 2050年
2.0℃ 1.5℃ 2.0℃ 1.5℃
日清オイリオグループ(株) 135$ 140$ 200$ 250$
ISF 40$ 90$ 160$ 200$

以上の「炭素税・ETS等によるコスト増」リスクの分析から、2.0℃および1.5℃シナリオのいずれにおいても削減目標を達成することにより2030年の負担額を半分程度に抑えられるという示唆が得られました。削減目標達成の場合、2030年度の2社合計負担額は2.0℃シナリオで20億円/年、1.5℃シナリオで26.1億円/年です。

③気象災害による生産停止に伴う利益減

「気象災害による生産停止に伴う利益減」については、国内事業を対象に洪水による操業停止を想定しました。また、物理リスクは長期的なリスクであるため、2050年のみを対象にしました。IPCCの4℃シナリオと2℃シナリオ下のそれぞれについて、操業停止による年間営業利益減少を算出しました。

▼表4:「気象災害による生産停止に伴う利益減」の財務算定結果

シナリオ 2050年操業停止による
年間営業利益減少額(億円/年)
4.0℃ 日本 1.76
2.0℃ 日本 1.32
  • ※年間営業利益減少額=災害発生頻度×操業停止日数×年間営業利益÷245日
  • ※文部科学省・気象庁による「日本の気候変動2020 詳細版」より、災害頻度は東日本太平洋側における日降水量200mm以上の発生回数(4.0℃  0.4回/年、2.0℃ 0.3回/年)使用しています。
  • ※操業停止日数は、国土交通省による「治水経済調査マニュアル」による床下浸水時の操業停止日数(10日)を使用しています。

以上の「気象災害による生産停止に伴う利益減」リスクの分析から、気象災害の影響が大きいとされる4.0℃シナリオでも影響額は1.76億円/年であり、財務影響算定を行ったリスク項目の中で最も影響が小さいことが示されました。今後、分析対象国の拡大や被災に伴う資産損害による影響(修繕費等)等も検討していく予定です。

(2-2)気候関連リスクおよび機会への対応策

  • 特定したリスク・機会を踏まえれば、「気候変動の進行が抑制された世界」「気候変動が進行する世界」のいずれに進んだとしても影響が大きく、中長期的観点から当社グループ戦略のレジリエンスをより高めていく必要があると考えています。
  • 当社グループの事業活動へ大きく影響するリスク・機会に対して、サプライチェーンの上流から下流までの各プロセスにおいて、主に以下の対応を採ります。これらの対応策は、当社グループ戦略のレジリエンスを高めることに貢献すると考えています。

▼表5: 気候関連リスク・機会への対応策

該当プロセス 分類 具体的な内容 対応するリスク・機会
移行
リスク
物理的
リスク
機会
政策・
法規性
技術 市場 評判 急性 慢性 資源
効率性
エネル
ギー源
製品・
サービス
市場 強靭性
原材料
生産調達
■持続可能な農業
  • RSPO認証取得や農家のNDPE実現に向けた支援活動
  • 乾燥や熱耐性型植物資源生産の支援および採用
  • 気候変動に適応する植物資源生産の支援および採用
■サステナブルな調達
  • サプライヤーとの関係強化を通じた農園までのトレーサビリティの拡大(特にパーム油)
  • 定期的な視察により、農園および搾油工場との協力関係を強化し、法令順守を徹底
  • 認証パーム油比率100%達成に向け、RSPOサプライチェーン認証取得範囲の拡大、MSPO、ISPO認証油調達を準備
  • パーム油以外の主要原料(大豆、菜種、カカオ等)について、サステナブルな調達を推進
■原料の価格・供給安定化
  • サプライヤーの複線化、原料の産地分散化および新規開拓、原料作物の多品種化推進
  • 農家、搾油工場と協働して気候変動への適応と原料品質の向上に取り組むことによる関係強化
  • サプライヤーに対して風水害対策、BCPの確立を要請、また支援活動を実施
  • 輸入原料の共同輸送によるコスト抑制を検討
研究開発 ■代替品・新機能の研究開発
  • 変化する顧客・消費者ニーズに対応するため、(仮)インキュベーションセンターを設置
  • 新たな油糧資源・機能素材の獲得(微細藻類等、穀物以外の油糧資源)
  • 生活習慣病や低栄養・フレイルの対策に貢献できる商品の研究開発
  • 植物油脂や植物性たんぱく質を原料とする肉代替、乳代替製品の研究開発
  • プラスチックの減量・減容・リサイクル、代替容器の開発を推進
製造 ■生産工程の資源効率化
  • 徹底した省エネ活動、エネルギー高効率な設備への移行、非化石エネルギー利用割合の向上
  • 脱炭素に資する新技術(水素エネルギー等)の検討と採用に向けた準備の実施
  • インターナルカーボンプライシングを導入し、設備投資等の意思決定に反映
  • 節水の徹底や水リサイクルシステムの導入による水使用量(取水、使用、排水)の削減
■サステナブルな商品の拡大
  • 付加価値エステル類の生産能力増強と化粧品認証へ適応した設備体制の確立
  • 植物原料を使用したUVケア商品等の関連製品の生産拡大
  • CFPに基づくロングライフ商品の機能訴求、アイテム拡充による市場規模および生産量の拡大
■生産拠点の風水害対策
  • 大規模気候災害に備えた生産設備の補強、護岸設備の整備を実施
  • BCPの定期的な見直し、継続的強化
物流 ■温室効果ガス排出削減
  • 企業間連携による製品の共同配送や輸送効率に配慮したモーダルシフトの推進
  • 積載率向上や拠点配送網の最適化による輸送回数の削減
販売 ■顧客および消費者理解の醸成
  • 認証油等の付加価値やブランド価値を反映した販売戦略の推進
  • 製品のサステナビリティ対応、CFP等の環境負荷の見える化による商品力強化
  • 行政および業界団体と連携した啓発活動による認証原料等の認知度向上
  • 脱炭素化を訴求した積極的なマーケティング活動の推進
廃棄 ■資源循環の推進
  • プラスチック原料へのリサイクル技術開発を行う企業への投資
  • 食品副産物を再生エネルギー源(バイオマス燃料、メタンガス)として活用
  • 消費者嗜好の分析に基づく需給管理による廃棄物の削減

※具体的な内容は実施中のものと検討中のものを含む

  • 原材料の生産~調達プロセスにおいては、現地農家とのエンゲージメントを強化する事で、認証油等の持続可能な原料生産、トレーサビリティ拡充を推進します。また購買活動としてサプライヤーの複線化によるリスクヘッジ、気候変動に適応した植物資源の採用等によりサステナビリティ向上に努めます。研究開発では、顧客・消費者ニーズに柔軟に対応するためのインキュベーションセンターを設置、既存原料に捉われない新たな油糧資源・機能素材の獲得、健康増進商品の開発、植物性たんぱくを原料とする食品、脱化石原料に向けたプラスチック容器代替品の開発等を進めていきます。
  • 製造プロセスにおいては、エネルギー・水等の資源の効率的利用の促進、変化する顧客・消費者ニーズに対応した商品生産の強化、気候変動により激甚化・頻発化する風水害等への対策の強化等を進めます。
  • 物流プロセスにおいては、炭素税などの法規制対応やカーボンニュートラル実現に向けて、企業間ネットワークを活用した共同配送網拡大、エネルギー効率の高い鉄道輸送などへのモーダルシフト推進による温室効果ガス排出量削減に取り組みます。
  • 販売プロセスにおいては、製品・サービスの環境負荷の可視化や持続可能性に配慮した認証原料の普及・啓発により当社グループのブランドイメージ向上と環境価値を活用した積極的なマーケティング活動を推進します。

(3)リスク管理

  • 取締役会が設置する委員会であるリスクマネジメント委員会が、事業に対する財務または戦略面での重要なリスクを選定しており、気候変動に伴う物理的/移行リスクの管理も行っています。
  • 重要なリスクはグループ全体を対象に、影響度合と発生可能性を分析し、重要度を3段階に分けて評価しています。また、短期・中期・長期の時間軸を考慮しています。下図3は、リスクマネジメント委員会で選定した当社グループの重要リスクを示しています。このように、気候変動関連リスクも他のリスクと統合的にマネジメントしています。

▼図3:リスクマップ

  • 重要なリスクは担当部門を特定し、PDCAサイクルによるリスクマネジメントおよび緊急時対応を実施しており、リスク対応状況の評価として、リスクマネジメント委員会による取締役会への報告、監査役会によるモニタリングを実施しています。

(4)指標と目標

  • 当社グループの気候に関する既存の目標としては、「CSV目標」および「環境目標2030」があります。
  • 気候変動対策として温室効果ガス排出量削減を掲げ、「Scope1、2の温室効果ガス排出量を総量ベースで2030年度までに50%削減する(2016年度比)」を進めていくこと、「Scope3は、購入した製品・サービスおよび輸配送(上流)の排出量を25%削減する(2020年度比)こと」を2023年に新たな目標として設定しています。これはパリ協定および日本の「国が決定する貢献(NDC: Nationally Determined Contribution)」に寄与するものです。温室効果ガスについては、2022年に第三者検証を実施、今後も継続・拡大していきます。
  • 温室効果ガス削減は、カーボンニュートラルを見据えた脱炭素化ロードマップに基づき、高効率機器導入や太陽光・水素等の非化石エネルギーへの転換によるScope1、2削減、サプライチェーンへの働きかけによるScope3削減を推進しています。Scope1、2、3排出量やその算定に用いた前提条件等については統合報告書(サステナビリティデータ集)で公開しております。なお、設備投資等の意思決定に際して2021年度以降ICP(内部炭素価格)を考慮しています。
  • 温室効果ガス以外の気候関連目標として、法令に基づく水質管理に加えて「2030年までに生産活動における用水原単位を2016年度比16%削減する」に取り組みます。廃棄物削減については、軽量容器やロングライフ製品等の環境にやさしい開発による発生抑制、生産工程における副産物を活用したバイオマスボイラーの導入やゼロエミッションの実践による再資源化を行っています。これらの活動は温室効果ガス排出削減にも寄与します。

▼表6:環境目標2030

テーマ 目標  
2022年度
実績
2030年度
目標
地球温暖化の防止  サプライチェーンの温室効果ガス排出を削減
  • ・Scope1、2におけるCO2排出量を削減する
△8.6%
2016年度比
△50%
2016年度比
  • ・Scope3のCO2排出量を削減する
日本植物油協会と連携し、日加菜種協議、日米パートナーシップにおいて、CO2削減に向け数値目標設定を促進 △25%
(カテゴリー1、4から取り組み開始)
2020年度比
  • ・環境教育を実施し、社員一人ひとりが事業活動を通じたCO2排出量削減を推進する
 再生可能エネルギーの利用を推進
  • ・堺工場における再生可能エネルギーの使用を促進する
  • ・堺工場への太陽光発電導入
100%
  • ・堺工場が主導する取り組みを他拠点へ広げ、グループ会社へと展開する
  • ・横浜磯子工場、名古屋工場、IQL(スペイン)でも太陽光発電を導入
資源循環の構築  生産工程における再資源化の推進
  • ・生産工程での再資源化率
99.8% 99%以上
  • ・食用油生産で発生する副産物を有効活用する
  • ・堺工場へのバイオマスボイラー導入
 生産に利用する水資源の効率的活用
  • ・生産活動における用水の原単位を削減する
△15.6%
2016年度比
△16%
2016年度比
植物資源 / 自然保全  持続可能な原料の調達を推進
・持続可能なパーム油の調達を推進する
・農園までのトレーサビリティを把握する体制を構築し、100%把握を目指す パーム油 90.9% パーム油 100%
・パーム油認証油割合を高める 59.6%(2022/1~12)
100%
・RSPO認証油のSG比率を高める 51.1%(2022/1~12)
50%
・持続可能な大豆の調達を推進する
  • ・「大豆調達方針」を策定し、7月に公開
安定供給を前提とした持続可能な大豆の調達
・持続可能なカカオの調達を推進する
  • ・「カカオ調達方針」を策定し、7月に公開
安定供給を前提とした持続可能なカカオの調達
 自然保全活動の推進
  • ・植林などの推進
  • ・マレーシアにてマングローブの植林(2ha、2500本)を実施
環境にやさしい開発の推進  プラスチック容器・包装の削減と資源循環を推進
  • ・プラスチック使用量の削減につながる商品設計や新たな容器を開発する
  • ・環境配慮型容器の生産体制増強
今後目標設定
  • ・リサイクルしやすい容器・技術の開発と社会におけるリサイクルの仕組みを整える
  • ・川崎市と協働し、家庭から排出される食用油・調味料の使用済みプラスチック容器回収実験を実施
  • ・資源循環が可能なリサイクル材や植物由来素材への代替を推進する
  • ・ホームユース商品(1000gポリボトル)へバイオポリエチレン導入
 植物資源を活用した、環境にポジティブインパクトを与える商品・サービスの開発
  • ・食用・工業用領域での環境ポジティブインパクト商品・アプリケーションを開発する
  • ・環境にポジティブインパクトを与える商品開発27件(フードロス対策、環境考慮型工業油脂・高付加価値商品)
今後目標設定

▼図4:気候関連の指標と目標一覧

脱炭素化に関する移行計画については、下図5のとおり「脱炭素化を推進する戦略ロードマップ」を策定し、2050年までにカーボンニュートラルを実現いたします。本計画はエネルギー削減に向けて再生可能エネルギーの活用、水素インフラの準備、生産効率の向上などの取り組みとして反映しています。

▼図5:脱炭素化を推進する戦略ロードマップ(移行計画)